【ストレスケア】ストレスとどのように向き合うか(認知行動療法 基礎)

毎日、何かしらのストレスがありますよね。

そのストレスをうまく解消できないと、健康的な生活からは遠のいてしまいます。

 

そこで本日は、認知行動療法に基づいたストレスとの付き合い方についてお話しします。

 

流行りのマインドフルネスなどについてもお話ししていきます。

 

 

 

【目次】

 

 

・ストレッサーとストレス反応の関係について

まず、行動認知療法の基本モデルについてお話しします。

 

まず、人がストレスを感じるときは、必ずそのストレスを与える状況が存在します。

このストレス状況のことを「ストレッサー」と呼びます。

 

ストレッサーは、その人を取り巻く環境により生じるものなので、ストレスを感じる人は制御することはできません。

 

ストレッサーの例をあげると、イライラして自分に八つ当たりしてくる上司や、仕事が山積みになっている状況、嫌いな虫が肩についていた、電車が遅延した、などになります。

 

このストレッサーによって生じる、自分の反応を「ストレス反応」といいます。

 

例えば「遅刻して上司に怒られる」というストレッサーによって生じるストレス反応には、「動悸がする」、「必死に謝る」、「悲しい気持ちになる」、「非常に申し訳ないと思う」などがあります。

 

ストレッサーとストレス反応は互いに影響をしあっております。

「恋人から連絡が来ない」というストレッサーに対し、「電話する」というストレス反応を行った場合、もし恋人が電話に出なかったら、おそらく当人は「電話に出てくれなかった」というストレッサーにより、さらに強いストレス反応を示すでしょう。

 

このように、ストレスというものを、ストレスを引き起こす「ストレッサー」と、ストレスによって引き起こされる「ストレス反応」に分けることが、認知行動療法において基本モデルとなっているのです。

 

すでにお気づきの方もいるかもしれませんが、同じストレッサーが与えられても、ストレス反応は人や本人の気分、考え方などによって変わります。

ストレッサーは変えられませんが、ストレス反応に関しては変えることができる、ということは、以前紹介した「7つの習慣」の「自分の影響の輪に集中する」という点と一緒だと言えます。

 

わざわざ「ストレッサー」と「ストレス反応」に分けるのは、自分の状態を客観的に理解し、自分が注力すべきポイントを理解するためなのです。

 

 

・ストレス反応はさらに4つに分けることができる

さらに、ストレス反応は「認知」、「行動」、「気分・感情」、「身体反応」に分けることができます。

「認知」とは、ストレッサーによりどのようなことを感じたか、ということです。

先程の「遅刻して上司に怒られた」という例では、「遅刻して申し訳ない」という思考が「認知」にあたります。

 

「行動」とは、ストレッサーによって引き起こされる行動のことです。

先程の例だと、「必死に謝る」というのが「行動」にあたります。

 

「気分・感情」とは、ストレッサーによってどのような気分になったか、どのような感情を抱いたか、ということです。

先程の例では、「悲しい気持ちになる」が「気分・感情」にあたります。

 

「身体反応」とは、ストレッサーにより生じる動悸や震え、顔の紅潮などの身体反応のことです。

先程の例では、「動悸がする」が「身体反応」にあたります。

 

これらの中で、自分で操作が可能なのは「認知」と「行動」になります。

認知行動療法」とは、「ストレス反応」の中で対処の可能な「認知」と「行動」に焦点を当てた治療方法のため、この名前がついているのです。

 

・過剰なストレッサーからは逃げる

このため、ストレス反応における「気分・感情」や「身体反応」が許容できる範囲を超えるストレッサーからは逃げることが必要です。

 

例えば、「夫にDVを受けている」場合や、「ネグレクトを受けている子供」などがこれに当たるでしょう。

 

また、うつ病になり、何もしていなくても「気分・感情」や「身体反応」に悪い影響が出る場合は、薬物療法など、医師による専門的治療が必要になります。

 

そういった場合は、必ず専門機関に助けを求めるようにしましょう。

 

・外在化・マインドフルネス・コーピング

ストレッサーとストレス反応を分けて考えられるようになったところで、それらを整理して理解し、ケアするための方法である、外在化、マインドフルネス、コーピングについて説明します。

 

一つずつ説明していきましょう。

 

①外在化

外在化とは、「把握したストレッサーやストレス反応を、書き出すこと」です。

 

外在化は、自分が感じたストレスを、ただ単に、紙に書き出すだけですが、セルフケアの効果があることが知られています。

 

皆さんは、ストレスを感じているときに、そのストレスが発生している原因(ストレッサー)や、なぜその原因に対して、様々な反応(ストレス反応)をしてしまうのか、理解しているでしょうか。

 

ストレスは小さいものから大きいものまであるので、自分でも気づいていないストレスはよくあります。

 

また、ストレスに悩まされている場合、反芻思考というグルグルと回る思考に囚われてしまい、いったい何が問題なのかわからなくなることがあります。

 

人は、わからないことに対し不安を覚えます。

ストレッサーやストレス反応に対し漠然とした理解だと、なぜこんなにも感情が揺さぶられるのかわからずに、さらに苦しくなってしまうのです。

 

そこで、有効なのが外在化です。

ストレッサーとストレス反応を分けて、紙に書き出す(外在化する)と、自分のストレスを客観的に見ることができるようになり、未知の不安が解消されるのです。

 

◆外在化の方法

外在化の方法は以下の2ステップからなります。

 

  1. 自分が感じたストレスに対し、ストレッサーやストレス反応に分けて考え、それらに気づく。
  2. それらを分けて紙に書き出す。(ストレス反応については「行動」、「認知」、「気分・感情」、「身体反応」で分ける。)

 

「そりゃそうだよね。」という内容で申し訳ありません。

 

この時に注意することとして、小さいストレッサーやストレス反応について、気づくようにするように意識することです。

 

例えば、「雨が降って嫌だなあ。」とか「弟がまた服を脱ぎ捨てていて、だるい。」などです。

 

小さなストレッサーやストレス反応に気づくことができれば、自分がどのようなことにストレスを感じやすいのか分析することができます。

また、分析後に自分がストレスを感じている時も、「あ、妹が部屋を散らかして、片付けていないからこんなにイライラするんだな。」と理解できるようになります。

 

自分のことが理解できると、その感情はコントロールが容易になります。

 

そのため、小さいストレスに対しても意識を向けて、外在化するようにしましょう。

 

これは、ビジネス本などでは「ゼロ秒思考」などで紹介されている方法です。

ゼロ秒思考では、1分間というタイムプレッシャーをかけた上で、テーマについて、頭に浮かぶことをそのまま紙に書き出す方法について書いております。

 

数週間続ければ、ストレスがかなり緩和され、思考も整理される方法でおすすめです。

 

 

 

②マインドフルネス

マインドフルネスとは、「自分の今ここ、の体験に気づきを向け、それを判断したり評価したりするのではなく、そのまま眺めたり受け止めたりすること」です。

 

マインドフルネスはGoogleなどの大企業の研修でも取り入れられている方法で、高いヘルスケア効果だけでなく集中力の上昇など、様々なメリットがある注目されている方法です。

 

スティーブ・ジョブズなど、多くのエリート経営者も実践しているマインドフルネス(瞑想)ですが、マインドフルネスが良い理由の1つにデフォルト・モード・ネットワークの活性化を抑え、脳を休ませる効果があるからだといわれております。

 

◆デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)とは?

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)とは脳のある部分で構成される脳内ネットワークで、脳が意識的な活動をしていないときに働くベースライン活動です。

自動車のアイドリングをイメージしてもらえば良いでしょう。

 

このDMNは脳の消費エネルギーの約60~80%を消費すると言われております。

そのため、DMNが活性化していると、一日中ぼーっとしていたのに、「何か疲れた」と感じるようになってしまうのです。

 

そして、DMNの主要部位の活動は、マインドフルネスによって抑制できると報告されています。

 

◆マインドフルネスの方法

マインドフルネスには多様な方法がありますが、結局やるべきことは「自分の現在の体験に判断や評価をせずに気づきを向けること」です。

 

それを踏まえて、マインドフルネスの方法をいくつか紹介していきましょう。

 

1. マインドフルネス呼吸法

一つ目は呼吸に集中する方法です。

横になるか、頭から腰まで糸で上から吊るされているような感覚で、背もたれを使わずに椅子に座ります。

その状態で目を瞑ります。

 

そして、自分の呼吸に集中しましょう。

 

同じ呼吸は一度もありません。

冷たい空気が鼻先から喉を通り肺に届く感覚や胸や腹が膨らむ感覚、横隔膜が下に下がっていく感覚、身体の中で温まった空気が肺から鼻先へ出て行く感覚を全て観察します。

呼吸の深さや長さも毎回異なるはずですので、これらも確認していきます。

これを3~10分程度時間を決めて行いましょう。

 

初めてやると、3分も集中してできないことが多いです。

 

しかし、集中力が切れてしまい、自動思考が頭に浮かんできても「だめだ」と判断したりせず、再び呼吸に集中するようにしていきます。

 

毎日続けていくと、集中が長い時間持続していくことがわかると思います。

 

2. 今、聴こえることに集中する

同様に目を瞑り、自分が聴こえる音に集中する方法もあります。

 

エアコンから空気が排出される音、外で車が走る音、小鳥のさえずり、隣の部屋の足音など、様々な音が感じれると思います。

それぞれの音を実況するように聞いてください。

 

そしてその状態を数分間続けるようにしていきましょう。

 

自動思考が出てきても、それに気づいたら再び聴こえることに集中すれば良いです。

判断や評価はせずに、その状況を見つめ続けます。

 

3. 食べ物の香り、食感、触感、音、味を味わう

食べ物を使ったマインドフルネスもあります。

 

食べ物を食べるときに、五感を駆使して、その食事を最大限感じます。

 

手に持てるものだと触感も味わえるので良いでしょう。

 

例えば、クロワッサンを食べるとしましょう。

 

まずはクロワッサンを手に取ってみます。

クロワッサンの軽さや形状、色を観察します。

そして、少し押してみたりして、そこから発される音や触感を楽しみます。

 

次に香りを嗅いでみましょう。

バターの香りや小麦の香りがするかもしれません。

砂糖の甘い香りがするかもしれませんね。

 

そしてようやく一口食べて、味わいます。

食レポをするように味わって食べます。

味や香り、口の中の触感、口が乾くか潤うかなど、様々な感覚を感じましょう。

そしてよく噛んで、口の中で風味がどのように広がるか、味や触感が変化するかを感じましょう。

 

初めて行う場合、全てのことを行うのは大変ですが、食事は五感を使って楽しむことができるものですので、マインドフルネスに最適です。

 

最初の1口だけでも行ってみると良いでしょう。

 

 

このように、「今、ここ」に集中するといっても様々な方法があります。

 

さらに具体的な方法については、さまざまな本が出版されていますのでそちらを参照ください。

私は特に「最高の休息法」がおすすめです。

 

 

また、アプリを活用するのもおすすめです。

特に、「Awarefy」は私が活用しているアプリで、マインドフルネスを行うための音声も入っているのでおすすめです。

www.awarefy.app

 

③コーピング

コーピングとは、「ストレッサーやストレス反応に対して、自分を助けるために、何らかの対処をしたり工夫をしたりすること」をいいます。

 

これまで紹介した、日々のストレッサーやストレス反応を外在化することも、マインドフルネスを行うこともコーピングです。

 

コーピングは傷ついた自分の心を回復させる方法です。

 

どれだけ工夫したとしても、ストレスが脳に組み込まれたシステムの1つである以上、ストレスをゼロにすることはできません。

そのため、ストレスを感じたら、コーピングによりケアをすることが重要になります。

 

小さくても良いので、コーピングを多く持ち合わせて置くようにし、

ストレスごとに適切なコーピングをチョイスできるようにしていきましょう。

 

スキーマ療法について

以上を理解した上で、さらに話を深めましょう。

 

認知行動療法ではストレス反応を「認知」「行動」「身体反応」「気分・感情」に分けることができることを説明いたしました。

 

ここではこの中の「認知」について、さらに「自動思考」と「スキーマ」の二つに分けていきます。

 

これまで考えてきたような「認知」は、ストレッサーによって頭の中に感じたことだといってきました。

 

これは、自分で考えようと思わずとも、発生する思考なので「自動思考」といい、頭の中に表出してくる浅い思考です。

 

この「自動思考」に対し、自分が考えてもいないような深い思考、いわゆる、自分が考えている常識や固定観念を「スキーマ」といいます。

 

例えば、あなたが友人との待ち合わせに遅れそうな状況を考えてみましょう。

 

この時に、「あー、なんでもっと早く準備をしなかったんだろう。走っていかないと、集合時間に間に合わない。昨日も遅くまで仕事しているから疲れているけど、しょうがないから走らないと!あ、歩行者用の信号機が点滅している!あの信号を今渡らないと絶対に間に合わない!急いでわたりきらないと!」と頭に浮かんでくるのが「自動思考」です。

 

自動思考は頭の中に絶えず、浮かび、そして消えていきます。

 

一方、この自動思考に基づく、根源的な考えをスキーマといいます。

例えば、この人は友人との待ち合わせに遅れないために走っていますね。

しかし、「多少の遅れなら仕方ない。」と考えている人はこんなに走ってまで急がないでしょう。

 

そのように考えると、この人には「集合には遅れてはいけない」というスキーマが存在するということができます。

 

また、信号機が点滅していた場合は、本来なら横断歩道を渡るべきではないですよね。

交通法規を必ず遵守すべき、と思っている方はこのような行動はしないでしょう。

しかし、この方は渡っています。

 

このことから、この方は「信号機が点滅していても、状況によっては渡ることもやむを得ない」というスキーマを持っていると言えますね。

 

さらには、信号機を気にしている点から「車に轢かれるのは嫌だ」というスキーマがあるとも言えます。

「車に轢かれても良い」と考えている方はほとんどいないと思いますが、「車に轢かれるのは嫌だ」ということを理解していない赤ん坊などは信号機なんてお構いなしに横断歩道を渡るでしょう。

 

このように、私たちが認知している自動思考には、その根っこにスキーマが存在しているのです。

 

 

スキーマ療法は諸刃の剣

スキーマは子供時代や思春期の環境や対人関係が深く関わってきます。

 

そして、このスキーマが原因で、生きづらいと感じてしまうことも多々あります。

そうした生きづらい状態を作ってしまうスキーマを客観的に見つめ、改めるのがスキーマ療法です。

 

スキーマ療法は、スキーマの理解のために、自分の嫌な感情を見つめたりすることにつながるため、心理的負担を伴います。

 

まず、うつ病やそれに近しい状態にある場合は、医師や心理士のサポートを受けて、心理的に安定してからスキーマ療法を行いましょう。

 

また、安定している方であっても、必ずスキーマを見つめる前後にはコーピングを行いましょう。

 

 

非常に長くなってしまいましたので、今回はここまでにして、次回はスキーマ療法の実践方法について説明いたします。

 

今回紹介した内容は認知行動療法の基本ですが、以下の本を参考に記載しましたので、よろしければご参考にください。